2011年12月23日金曜日

CDGにて

面白い本を読んだ。
小倉恵美子「オオカミの護符」新潮社、2011年。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%81%AE%E8%AD%B7%E7%AC%A6-%E5%B0%8F%E5%80%89-%E7%BE%8E%E6%83%A0%E5%AD%90/dp/4103316918
「社会にとって大切で必要であるけれど、まだ仕事になっていない多くのことがある」という言葉に強い印象を受けた。
その通りなのだ。
どれだけ優秀であっても、誰かが作った仕事をしている限り、どれだけの成果をあげても単なる秀才の域を出ない。
親になる身としては、我が子には「将来どんな仕事をするか?」などと訊くのは絶対しないことにしよう。ばかげている。
ただ、こう伝えるのだ。
「お前は日本を背負うために生まれてきたのだ。しっかりやれ」
こう言っておけば、まさか「職業の名前」で仕事を選ぶような阿呆にはならんだろう。そんな輩ばかり見えるのだが。
ところで、このオオカミ系の新しい本だが、抜群である。
俺が暮らす横浜市青葉区から程近い川崎氏宮前区土橋に昔からある”百姓”(なんで”百”なんでしょうね)の家に生まれた著者は、東急電鉄の大掛かりな開発によって田畑しかなかったこの土地がどんどん見目麗しい先進的な郊外都市になっていくのに戸惑っているとき、ふとオオカミの護符が彼女に目に入ってきたという。
そして、物語は青梅の御岳山のオイヌ様信仰を謎解きに至る。
青梅のオイヌ様といえば、その昔神武天皇東征の折に、このあたりに到着したとき、この地の神が怒って巨大な鹿を神武天皇の前に遣わし道をふさいだときに、二頭のオオカミが現われて神武天皇を導いたという伝説がある。
俺が、去年「狼=大神」というタイトルでこのブログにひとつ記事を書いたのはこの伝説に因る。
こういうふうに歴史を学ぶべきなのでしょうな。
織田信長が毛利ヤノスケに桶狭間で一番の褒賞を与えたとか、真珠湾攻撃のときに山口多聞は第二次攻撃をやる気満々だったとかいうも歴史なのだが、そうではなくて、自分の先祖が何を信じて何を思って生きてきたかということを知ることが、一番大切ではないのか。
そして、そういうことを物語ることが大人の仕事ではないのか。
あぁ、日本昔話を観たい。

TPP。
TPP反対というと、過去数ヶ月の間に何人かの人に「農協守って日本滅ぼすの?」と言われた。
前原さんの洗脳にどっぷりか?
このTPPは、明らかに覇権国家を諦めて帝国主義国家へと舵を切ったアメリカの東アジア・西太平洋政策の根幹を成している。
アメリカは、増大し続ける戦費をまかなえずにイラクとアフガンから撤退し、リビアにはトマホークを控えめに打ち込んだだけで大規模な作戦には参加せず、ムバラクに至ってはだんまりを決め込んでなるにまかせて失脚させた。
金融緩和と量的緩和を史上かつてないほどのレベルで行うことでドルを減価させ、輸出を増やそうと躍起である。
国内で豊富に産出されるシェールガスのために、アメリカはガスを中東から輸入する必要がなくなり、逆にガス輸出国になることすら考えられる。つまり、中東に巨大な軍隊を貼り付けておく必要はもはやない。もっとも、サウード家のアラビアが崩壊して油価が暴騰するところまでは許さないだろうが。
アメリカは、これから、世界全体のことになんでも空母を覇権する超大国・覇権国家であることをやめて、それよりも安上がりで効果的な19世紀的な帝国主義国家になることを戦略として選んだのだ。
この視点でTPPを考えるべきだ。
日本は戦後60年間、ひたすらアメリカに貢ぎ続けた。TPPはその最終装置である。もちろん国内にこのアメリカ勢力と利益を一にしている者(大手製造業、大手商社など)は存在する。その声を代表する新聞(日経)もある。
問題はイランだ。
もしイランが俺と同じように考えているとイスラエルが考えたら、イスラエルはますますイスラエルへの先制攻撃の誘惑に強く駆られるだろう。最近テヘランはホルムズ海峡封鎖作戦を実施するとかしないとか言っていたが、これなどはこういうブラフを言い、行いながら、ワシントンの反応を注意深く探っているのだろう。
アメリカが世界帝国をやめるとき、もっとも危険なのは中東である。東アジアは、将軍様が死んだといってもいまだにアメリカの強大な戦力がグアム・日本に維持されており、すぐに危機にいたるとは考えにくい。
地政学的に言えば、巨大な帝国主義国家は海洋覇権を巡って対立する運命にある。その意味で、大日本帝国とアメリカが戦ったのもマクロの視点から言えば、石原莞爾が言ったように歴史の必然であったし、これから中国とアメリカが対決をしていくのも当然のことだ。サンフランシスコの近海に中国の空母が遊弋することをワシントンが絶対に受け入れられないように、北京も台湾海峡に米空母がスィーと入ってくるのを許すことができない。
で、わが国はどうするのか。

橋下大阪市長と堺屋太一氏の共著(文芸春秋新書だったはず)を読んだ。
すべての組織は、自己の存在意義を肯定することを前提とする、激しく同感である。
だから、行政の側によって既存の行政組織(それがすでに機能していない場合)を改革してどうするこうするなど、できるはずがない。それは、大阪市役所だけの話ではなくて、つまりは日本国家のことでもある。
平松前大阪市長は、橋下氏の「大阪都構想」について、「大阪都?できるわけありまへん!」と見得を切っていた。
喧嘩慣れしていないまじめクンの発想である。
過去たった500年を振り返っても、世界でどれだけの帝国が崩壊し、王様が国を追われてきたことか。俺がいまこれを書いているフランスなどは、王様の首をギロチンでチョッキンと切ってしまった国だ。それが、自由・平等・博愛の国というのだからねぇ。
そういう歴史感覚で大阪や今の日本を眺めれば、「大阪都?できるわけありまへん!」なんて言葉は絶対に出てこないのだ。
「なぜ大阪都構想はだめなのか?」について平松氏は一生懸命語ればよかったのだ。
「これは戦です」と言う橋下氏は、政治の本質を誰よりもよく理解していると思う。
すでに利益を握っているものから奪い取りに行こうというゲリラまがいの戦い方は、すべての革命家が行ってきたことだ。多勢に無勢での戦いを始めたからこそ、革命家は革命家なのだ。
これから橋下人気に中央の怠け者政治家がすり寄って行くだろう。数年後に、橋下総理大臣ということもあながち無茶な想像ではなくなってきた。
時代を維持するのは常識人で、時代を作るのは変人奇人である。
今の日本に必要なのは、破壊である。

チェ・ゲバラの名言。殺されるその瞬間に射手に対して、
「落ち着け、よく狙え。お前をこれから一人の男を殺すのだ」
すごい。
なにがすごいのか。
彼は、別のところでこうも言っている。
「世界の別の場所での不正を自分のことのように思える人になりなさい。それこそが革命家としてのもっとも美しい資質なのだから」
彼は、自分の命を絶とうして狙いを定める射手に対して、自分のことを考えずに、射手のことを考えている。
命が奪われるその瞬間にさえ、「あ、こいつ俺を殺すのに緊張してやがる」と思える男というのは常軌を逸しているのだが、ゲバラはそのレベルの人間だったのだろうと思う。

少し前にスターバックスを設立したハワード・シュルツ氏の本を読んだ。「スターバックス成功物語」。
株主対策という面もあるから、8割りがけで読む必要はあるが、スターバックスがどういう会社になりたいのは気持ちいいいほど伝わった。
世の中、正しいことなどない。いや、あるんだけど。誰もが好き勝手を言ってえらそうにしていやがる。

子供の名前は、女の子なら「三谷原優子」、男の子なら「三谷原国義」とすることに決めた。
ぜんぜん優しくないサッチャーのような女や国の義なんてどうでもいいと叫ぶ新時代の共産主義者になるかもしれぬが、まぁそれはそれでよかろう。
なんせ俺の名前は、「基本が大事じゃろうが」ですから。
ちびすけを抱っこしてショルダープレスをしたりスクワットをしたりするのが今から待ち遠しい。