なんじ独りなるものよ、今日は、なんじなお多数者のために苦しんでいる。今日は、なお勇気と希望とを持っている。しかあれど、いつの日か、孤独はなんじを疲労せしめるであろう。いつの日か、なんじの矜持はせぐくまるであろう。なんじの勇気は難破するであろう。いつの日か、なんじは叫ぶであろう、ー「自分は寂しい!」と。
いつの日か、なんじははや自己の高さを見ないであろう。自己の低さをのみあまりに近く見るであろう。なんじの有たりし崇高なるものすら、幽霊のごとくなんじを畏怖せしむるであろう。いつの日か、なんじは叫ぶであろう、ー「一切は虚妄である!」と。
孤独なる人間を殺そうとする感情がある。殺すことができなければ、この感情は自らが死なねばならぬ!なんじはよく殺戮する者となりうるか?
同胞よ、なんじはかの「軽蔑」という言葉を知っているか?また軽蔑する者に対してなんじ自身を公正ならしめんとする、なんじの公正の苦悩をば知っているか?
なんじは多数者を強要して、なんじについて改め学ばしめんとする。これに依ってかれらは、なんじに含むのである。なんじは彼らに近づき、しかも通り過ぎ去った。これをかれらは宥すことができない。
なんじはかれらを超えた。なんじが登ること高ければ高いほど、嫉妬の目はなんじを小さく見る。しかして、飛翔しゆく者は最も甚だしい憎しみを受けねばならぬ。「いかならば、なんじらがわれに対して公正でありえようぞ!」ーとなんじは言わねばならぬ。「われは運命の当然の分前として、なんじらの不公正を選び取るのだ。」
かれらは孤独なるものにむかって、不公正と汚穢とを投げつける。されど、心せよ、同胞よ、もしなんじが星であろうと願うならば、彼らに対し光り輝くことこの故に薄くあってはならぬのだ!
さらに、善き者、義しき者を警戒せよ。自己のために道徳を作り出すものを、彼らは好んで磔刑にする。ーかれらは孤独なる者を憎悪する。
神聖なる単純をも警戒せよ!この女などとっては、単純ならざる一切のものは邪悪である。この女は好んで火をー焚刑の火を弄ぶ。