「私にとって生きて帰るということは何よりも大切なことなのです」
映画「永遠のゼロ」のなかでの主人公である零戦パイロットの言葉である。
仮に、福島の原発事故の対応に際して、全ての自衛隊員、全ての消防官、全ての警察官と全ての東電の社員が、「私にとって生きて帰るということは何より大切なので任務を放棄して家族のもとに帰ります」と言って福島第一原子力発電所から撤退していたら、何が起こっただろうか。
たぶん首都東京を含めた東日本は壊滅していただろう。それはすなわち日本という国の崩壊である。
あの時、東電の社員も自衛隊員もハイパーレスキュー隊も、確実に死を目の前に感じたことだろう。想像することさえ苦しい。
ところで、この映画のなかで主人公は最後には志願して特攻作戦に参加し、戦死する。
そんなわけだから、命が何より大切だと言っていた人間がなぜ特攻に志願したのか?という疑問に答えるために、主人公の心の動きをじっくりと描くことがこの映画をつくる者の腕の見せ所のはずだ。
ところが、ここの描写は極めて粗く、玉砕していく特攻機とパイロットを多数見てきた主人公は、幽鬼のようになったまま一人米空母に突撃していく。この心の動き、変遷が俺には全く理解不明なのだが、実は俺などには理解できない深淵な主人公の葛藤や苦しみの克服などがわかる人にはわかるように描かれているのだろうか?本を読めばわかるのだろうか。あまりに謎だからもう一回観てみよう。
ちなみに、この映画のベストシーンは、ずばり合コンの場面。もう一つのベストシーンは、主人公が訓練中に墜落死した飛行学生の名誉を守るために上官に立ち向かった場面。生きている者の感情ではなく、死んだ者の名誉こそ我々は守らにゃならんのだ。
なーんかこんなことばっかり言うてるなー