2011年3月1日火曜日

量的緩和という経済爆弾。低金利の誘惑。

仮説か。暴論か。

亜米利加が日本のようなデフレに陥ることを防ぐためにQE2(量的緩和第二弾)で今年中盤までに60兆円のドルを市場に放出。
構造的なデフレ状態にあるアメリカ(や日欧などの先進国)に投資機会はもはやなく、過剰マネーは新興経済国・資源国へ流入。
新興経済国などの多くは自国通貨をドルにペッグしており、交易条件悪化を防ぐために自国通貨売り、ドル買い介入を行う。
自国通貨売りによって新興経済国などでは、過剰マネーが膨張し不動産などの資産インフレ(バブル)を生み国際商品市況を高騰させる。
(これが中東の最近の騒動に少なからぬ影響を与えていることはいろいろと報道されている通りだ)
これを防ぐためには、新興経済国政府は利上げと為替の切り上げをせざるをえないが、これをやると経済成長が鈍化し、資産インフレが急激に冷やされればバブル崩壊という悪夢もありうる。
そのため、結局新興経済国は、ブラジルのように自国への先進国からの資本流入を制限しない限り(もっともそうしてしまえばグローバル経済からある程度孤立することになるのだが)、利上げ・為替切り上げを避けられない。

米国FRBのバランスシートは2008年の末から約二年ほどで2倍以上に一気に膨れ上がった。その分のマネーが市場に(つまり世界に)放出されたということだ。
「また陰謀論か」と言われそうだが、彼らの思惑がどうであれワシントンのQE2が北京に対して持つ破壊力は甚大だ。
中国には現在8000万戸もの空家のマンション(投機目的で購入されたもの)があるというほどのバブル状態にあるが、これを崩壊させられれば中国の国力は一気に減衰する。

中国にまでついに飛び火した「ジャスミン革命」が、中国バブルの崩壊によってさらに刺激されるならば、北京政府の政権は危殆に瀕する可能性もあるだろう。

日本がかつての$1=360円から現在の80円にまで円が切り上がる過程で、どれだけの努力をして高付加価値産業へ移行してきたか。中国がもしこれを日本と同じように行えないのならば、中国は利上げも為替切り上げも行うことができず、「一流の二流経済国」として弱い元に頼って元を刷りまくるという破綻への道を歩むしかないのだろう。

思うのだが、インフレにおいては借金をしやすい。だから、新たな産業が生まれやすい。一文無しの若者が大借金をするリスクが小さいからだ。
デフレは、既に金持ちになった人にとって都合がいい。彼らは借金をする必要がなく既に金を十分持っていて、なおかつそれを預金口座に預けておけばその価値が増大するからだ。
デフレというのは、政権にとっては悪くないのだ。
給料が減っても吉野屋で280円でとりあえず飯は食べられるし、不動産や株式を大量に保有していない限り資産が減耗することもない。何よりも、日本のようなGDPの200%もの負債を抱える国にとっては、デフレ=低金利というのはなによりも財務当局の心を宥めてくれるものだろう。金利が1%であれば、そりゃ借金もそんなに怖くはない。

だが、低金利によって本来死ぬべき、役目を終えた企業がマーケットから退出しないという悪弊はもっと注目されてしかるべきだ。日銀がどれだけ量的緩和をしても、日本のデフォルトの確率がどれだけ高まっても、銀行は国債を購入し続けることの最大の理由は、単純に新たな資金需要がないからだ。そして、資金需要がないということは、つまり新しい産業が生まれていないということだ。

おかしいだろう。
この日本の財政状況をみれば、どう考えても長期金利が1.5%というのは異常だ。
低金利というのは近視眼的に見れば非常に甘い誘惑なのだが、それが故に抜本的な財政改革はさらに遅れ、それが遅れれば遅れるほど、「日本の財政破綻」がもたらす災害は大きくなる。
数年前、財務省に勤める友人が、「銀行は国債を買い支えるしかない。だって国債が暴落すれば彼らは倒産する」と言ったことがあるが、もしそうなら御の字だ。今はまだ民間の貯蓄が政府の借金を優に上回っているが、これが逆転するときー例えば、上記のような新興経済国の金利上昇によって先進国と新興経済国の金利差がさらに拡大し、国内の資金がより高い利回りを求めて海外へ流出する場合ー、国内の銀行はどうやって日本の国債を買い続けるのか?市中銀行の代わりに日銀が国債を買い進めるならば、それが意味するところは誰もが知っているインフレだ。

頭の整理のためでした。