原発稼動停止に伴う膨大な量の代替燃料の輸入と円高による輸出の不振によるものと説明されている。
ときを同じくして、貿易黒字の立役者であるべき多くの大手電機会社の大赤字決算が伝えられた。
各社の2012年3月期連結税後利益見込みは次の通り。
日立製作所:2000億円
三菱電機:820億円
東芝:650億円
富士通:350億円
NEC:▲1000億円
ソニー:▲2200億円
シャープ:▲2900億円
パナソニック:▲7800億円
合計:▲1兆80億円
シャープとパナソニックだけで優に1兆円を超える赤字。
自動車産業とともに、日本の高度経済成長を支え続けた電機会社は、半導体でもテレビでも音楽プレーヤーでも情報通信デバイスでも、SAMSUMGやAppleに追い越され、もはや世界のトップと互角に戦う力を失った。
現代自動車にホンダはもう勝てないだろう。エコと軽自動車だけに力を入れてきた日本の自動車メーカーは、ドイツの御三家にプレミアム・セグメントで絶対に勝てないし、さりとてタタ自動車も参入してくるような、低価格市場の勝負も心もとない。
つまり、日本の製造業の大方に日没が近づいている。上記の電機会社の決算は、もはや短期的なものではなく構造的に日本の製造業が稼げなくなりつつあることを示している。日本で作り、海外に販売するという成長方式は、もう終わったのだ。
他方、総合商社は絶好調である。在りし日の藤原道長もさもありなんという風だ。
総合商社5社の2012年3月期連結税後利益見込みは次の通り。
三菱商事:4500億円
三井物産:4300億円
住友商事:2500億円
伊藤忠 :2800億円
丸紅:1700億円
合計:1兆5800億円
2月4日付の日経に、7つの商社合計で今年一年間で海外からの受取配当金が1兆円を超えるとの報道があった(下記ご参照)。
2009年、2010年ともに経常収支の黒字は15~16兆円だから、黒字分だけをみても総合商社の所得収支は日本の経常収支の実に7%を賄っていることになる。
恐らく貿易収支の赤字は定着するだろう。貿易黒字国の看板は中国と韓国に譲り渡し、日本は老大国として所得収支で食っていくほかない。
(もちろん、産業界におけるイノベーションによって輸出競争力の増強を目指す産業政策も企業の自助努力も必要である。)
その意味で、商社はアジアの老大国・日本を支える新たなビジネスモデルを構築したといえる。
日本の所得収支は10兆円を超えている。対外純資産を250兆円をも持っているからなせる技だ。貿易収支が2.5兆円の赤字に陥ったとしても、それを賄ってあまりあるだけの所得が毎年外国から流れ込んでくるわけだ。
だからこそ、GDPの2倍の借金(ギリシアやイタリアよりはるかに悪い)を抱え、税収(42兆円、2012年度)よりも大きな毎年の国債発行(44兆円、4年連続)しているにもかかわらず、10年ものの日本国債の金利は1%に止まっている。もしこれが、2%上昇すれば、たぶん日本の財政は破綻する。その場合、毎年の利払いだけで20兆円増加することになる。現在の税収が42兆円、これは減少していくだろう。人口減少・超高齢化社会の日本がどうやってこの負担を支えられるのか?
2015年~2020年には、公的債務の累積額が民間貯蓄を上回る可能性も指摘される。それは、日本政府が借金をするのに国内の(日本人の)貯蓄を当てにすることができなくなるということであり、日本は生きていく為に、ギリシアのように外国の資本に依存しなければならなくなる。そうなれば国債の金利はとても1%ではあり得ないだろう。
急激な金利の上昇は、物価上昇をもたらし、年金と貯蓄で暮らすシニア世代の生活を直撃する。持てる者と持たざる者の格差は拡大し(不動産などの資産はインフレに強い)、年金受給開始年齢は70歳に引き上げられ、消防士や警察官の数は削減され、教育水準は低下する。変動金利で住宅ローンを設定している多くの労働者がローン返済ができなくなり、持ち家を手放すということになる。
もっとも、これによって、日本の製造業の国際競争力があるうちに、円が暴落することで交易条件を無理矢理に改善させて経済成長を導き財政赤字を削減するという荒療治も、可能といえば可能であるが。
明治期に外国へ必要な物資を買い付けに出かけ、大東亜戦争の後には日本製品を海外に拡販することを持って国を支えんとした商社は、いまや投資事業会社となって日本に海外の富を還流させるという重要な役割を担っている。
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大手商社、海外から配当1兆円 円高で資源投資拡大
三菱商事、三井物産など大手商社7社が2012年3月期に海外子会社などから受け取る配当金が1兆数百億円に達し、過去最高になる見通しだ。この10年で貿易業務から事業投資で利益を上げるモデルに転換した効果が表れた。12年3月期の海外投資額は7社合計で初めて3兆円を超える見通しで、積極投資による受取配当金の増加が続けば、日本の経常収支を下支えする要因にもなりそうだ。
三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、双日、豊田通商の7社に聞き取り調査した(一部日経推定)。
11年3月期の内外の子会社などからの受取配当金(単独)は7社合計で約1兆180億円。海外子会社からの受け取りが大半で、5年前の2倍、10年前の3倍に膨らんだ。12年3月期はこれを上回るのが確実とみられる。
受取配当金の内訳で最も多いのは、海外の油田、ガス田、鉱山など資源権益からの収入。海外IPP(独立系発電事業者)など電力インフラ関連への出資も収益源になりつつある。今後は水道、食料関連の海外投資も収益を生むとみられる。
自動車、電機など取引先のグローバル化が一気に進んだ1990年代後半、海外との取引を仲介する商社の口銭ビジネスは限界に直面した。各社は生き残りをかけ、海外でのネットワークを生かして資源権益やインフラへの事業投資を加速。新興国投資も増やし、海外への投資で稼ぐ事業モデルに転換した。
各社は今後も海外投資を加速する。12年3月期の7社合計の投資実績見込み額は3兆1800億円。過去最高だった08年3月期の2兆3500億円を大きく上回る。13年3月期も3兆円規模の投資が続く可能性が高い。
今期約1兆円の投資を見込む三菱商事はチリの銅山子会社に4200億円で出資したほか、オーストラリアの石炭鉱山の拡張工事を決定した。伊藤忠商事は米投資ファンドと組んで米石油・天然ガス会社を5400億円で買収した。三井物産も出資先の豪鉄鉱石鉱山で拡張工事を実施、丸紅は米国で新型石油・天然ガス権益を2つ取得している。
大手商社が強気の投資姿勢を維持しているのは、円高で投資力が高まっているため。欧州財政危機を受け欧州系金融機関のリストラなどで割安な売却案件が増えていることも投資加速の要因になっている。新興国を中心に中長期的に成長が見込める資源・エネルギー分野やインフラ整備関連、食料・医療分野への投資が中心になるとみられる。
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