「4000本を売った9日後に、9点差の試合で8回裏に代打に出された。一生忘れない、今後の自分を支えてくれる経験。普通、ルーキーやメジャーに上がりたての若い選手が務める仕事。打席を拒否することはできた。が、逃げなかった。そういう自分が自分はけっして嫌いではない。」
「これまでの自分を支えてきたのは、屈辱。成功ではない。」
「18歳の、1本の安打も打ったことがない自分は、ドラフト直後のインタビューで打撃とは何か?と問われ、打撃は楽しい!と躊躇なく答えた。4000のヒットを打ったいま、そんなことは絶対言わない。全然楽しくない。変な話。」
「自分が強いとは思わない。だけど、自分の弱さを見つめることはしてきた。屈しない自分でいたい。」
「最終的な打撃の形はない。だから前に進もうとする。常に前に向かいたいがそうもいかない。後退もある。はっきりしているのは、近道はないということ。ぼんやりとした遠くの理想に近づく方法は、遠回りをすることだけ。」
「結局は、野球がどれだけ好きかということ。僕、大好きだから。野球からほぼ全てを学んだ。そんなものに、デタラメな姿勢で向かえるわけがない。」
「まだやれることがある、というよりは、何かを達成したからやめる、というよりは、まだ苦しみが足りない、そう思う。まぁ、まだ苦しみが足りないと考えているということは、まだできると考えているということだろうけど。」
今シーズンの最後、162試合目。ヤンキースのレギュラー陣は出場はないとスパイクも履かずにのんびりしていた。イチローだけは、打撃グローブを手にはめ、いつでも出られるように準備していた。たまたまその試合は延長14回まで続いた。イチローは、14回表のイニング、ロッカーでいつでも打席に向かえるように素振りをしていた。
これが、イチロー。
試合に出ようが、凡打に終わろうが、4000本目の安打を打とうが、自分だけは変わらない。
それが、イチロー。
2013年12月16日