2010年10月31日日曜日

TPP(環太平洋連携協定)と農業

TPP。トランス・パシフィック・パートナーシップ。環太平洋戦略的経済連携協定。
なんでもかんでも英語で略すから、東アジアだけでもAPECだのARFだのASEANだのごちゃごちゃになっている。またその一つか、、、と思いながら、日経新聞が毎日TPPについて「はよせんとバスに乗り遅れますよ!」と大慌ての体で書いているのを読んでいる。これは、チリなど四カ国が始めた自由貿易協定を基に、米・豪など計九カ国が協定の拡大・改定について交渉しているものだ。関税撤廃の例外を絞り、貿易自由化の度合いが高い協定を目指すもので、加・韓・中国も関心を示しており、日本も加われば文字通り環太平洋の巨大貿易圏が誕生する。

日本にとっての論点は、要するに「農業保護か、自由貿易による製造業支援か」ということになるのだろう。現状では、管首相は来月の横浜でのAPEC首脳会議で参加表明をするそうだが、政府にも民主党内にもTPPへの反対は非常に強くある。当然ながら、農業団体・農水省は必死になってTPPへの参加表明を阻止しようとしている。全国農業協同組合中央会(JA全中)の茂木会長は、10月28日の記者会見で、TPPへの参加によって、「農業が壊滅し、農業機械といった製造業、運送業など幅広い産業が影響を受け、地方の雇用が失われる」と述べた(http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010102800737)。価格競争力のない日本の農産物は、関税の庇護を失えば、海外からの輸入農作物によって圧倒されてしまうという。

これに対して、日経新聞は、TPPへの参加が必要だという立場であり、打撃を受けることがほぼ確実な農業については、「関税による保護から財政による保護」への政策の切り替えで対応し、米などの国際競争力のあるものとそれ以外(たとえばこんにゃく芋や砂糖)を分けて、前者についてはこれまでの減反政策を廃止、後者については追加的財政支出は不可欠と主張している(http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE3E5E0E0EAE4E5E2E0EBE3E2E0E2E3E28297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D)。

簡単な事実と対立している意見を羅列したが、俺はこの問題について回答を出せていない。
韓国との比較で考えてみよう。
日本と主要産業がほとんど同じであるお隣韓国は、既に米国・EU(注)という巨大市場とFTA(Free Trade Agreement)を締結済であり(批准はまだ)、東南アジアの多くの国とのFTAはすでに発効している。たとえば、2015年には現代自動車がドイツに輸出する自動車に関税はかからなくなるが、ニッサンの自動車はEUが域外から輸入される自動車に課す10%の関税がかかってくる。韓国自動車産業はまもなく日本よりも100m競争で10mも前からスタートすることになるのだ。ただでさえ労働力が日本より安いのに。韓国のGDPに占める輸出の割合は実に45%。日本は、日経新聞の円高恐怖症のせいでひどく輸出依存度が高いように思われているように思うが、実際は韓国30ポイントも低い15%。韓国が、資源国(韓国は日本と同じ程度の資源輸入国)や新興国(韓国は海外市場がどうしても必要)とのFTAを戦略的に結ぼうとする理由はよく分かる。そもそも、少女時代などのアイドルグループがわざわざ日本語をおぼえて日本でデビューするのは、国内市場が製造業だろうが芸能だろうが小さすぎるからなのだ。それと製造業についても構図は同じなのだ。

では、日本はどうするべきなのだろうか。
農業の競争力強化。生産規模の拡大。海外への生産物の輸出。ぐらいだろうか。
アメリカの27分の1の耕地に、500分の1の牧草地に、アメリカの1.8倍の農家がひしめいている。そしてのその農家は後継ぎがおらずほとんどが60歳以上。
戦後日本=自民党一党支配=地方の土地持ちの支持基盤。
なにやら問題が見え隠れするよなしないような。。。

引き続き考えます。

「農業と製造業」、あるいは「財政と農業」についてご意見をお持ちの方、あるいは読むべき本はこれ!というのがあれば、ぜひ教えてください。
よろしく頼みます。
キーワード:「農業生産性」「食糧安全保障」「個別所得補償制度」「地方の景観維持」「製造拠点の海外移転」「円高」などなど

(注):EU-韓国のFTAでは、米が除外されている。ただし、EUでの米の生産はスペイン・イタリアで細々と行われているだけで、EUにとってはさしたる問題ではなかっただろう。さすがにというべきか、キムチの国はやはりトウガラシもFTAの対照から外している!したたかなるかな、大韓民国。これをして我は「キムチ安全保障」と呼びたい。キムチのない韓国は、廻しをつけない相撲みたいなもんですね。

独り言:

ところで、管首相の口から出てくる、日中間の「戦略的互恵関係」という言葉、恐ろしいほど内容空疎だ。さすがに我が国の首相なので、「阿呆の空念仏だ」と言ってすますわけにはいかん。
人民解放軍海兵隊が尖閣に上陸してきても、「戦略的互恵関係の維持が大切だという点で我々は一致している」とでも言うつもりか?国内政治だろうが国際政治だろうが、ゼロサムの局面があるから政治があるのであって、十分に大気中に存在する酸素をめぐっては「政治」は発生しないし、発生する必要がないのだ。
”国際政治とは、ほかのすべての政治と同じく、希少資源の権威的配分である”(ハンス・モーゲンソー)
日本人よ、戦争はしなくていい(しないといけない)が、戦争をする覚悟を持とう。じゃないとヤクザに脅されて終わりだ。世界におまわりさんはいない。おまわりさんがいないからイラクの10万余(多すぎやしまいか?阪神大震災でさえ犠牲者は1万にはるか及ばぬ)の民は米軍の「誤爆」で殺されたのだ!!!

米国中間選挙がまもなく。茶会党がブイブイ言わせとる。
だが、建国の理念が、「権力への批判=個人主義(銃保持の憲法による保障⇒革命権?)」である国って、そもそもどうなんだろうか???そもそも国家というのは”神話”の上に成立するものだと思う俺からすると、今回改めてあの国の異様さを感じざるをえない。ホッブズが「リヴァイアサン」で書いた怪獣の姿が、これまでのアメリカという国の暴力専横ぶりに重なって見えるのは俺だけか?
まぁ、「俺の税金を博打やって大損こきやがった弩阿呆バンカー野郎に渡してくれるでねぇ!」というサウスダコタ辺りの農家のおっちゃんの叫びは、分からんでもないのだが。(銀行・証券業の方へ:銀行・証券業=博打だと俺は考えてません。一部企業においては、そういう要素もあったのだろうという程度に思っている)

ブログ開始より約5か月。投稿は約100。
これぐらいのペースを維持していこうと思う。