2010年7月18日日曜日

佐藤優「"国家統合の危機"に覚醒せよ!」

月刊日本というあまり有名ではない雑誌の最新刊に、佐藤優氏がいわゆる普天間問題について寄稿している。コンパクトだが非常に優れた、示唆に富む小論と思うので紹介したい。
鳩山氏が「海兵隊が抑止力とは知らなかった」という前代未聞の言葉を残して辞任して以降、普天間基地移設についてメディアが大きく報じることは絶えてなくなった。まるで鳩山氏辞任と参院選での消費税増税の争点化
で、この問題は一件落着したかのような感さえあるが、当然ながらまったく事態は改善していない。以下は佐藤氏の論文の要約である。

"日本の陸地面積の0.6パーセントの沖縄に、在日米軍基地の74パーセントが集中している。この不平等は、もはや政治闘争や経済闘争ではなく、沖縄に対する構造的差別を象徴するものとして沖縄の住民に広く認識されつつある。何故か?普天間基地を県外に移設しようとすれば、(徳之島がそうであったように)、住民の反対により実現不可能だ。だが、辺野古周辺に暮らす住民も、移設には反対にしている。どちらも民主主義の原則に従っているから、沖縄の住民の民意も沖縄県外の民意と同様に尊重されねばならない。しかし、東京の政治エリートは、沖縄県内での移設を強要しようとする。これは、つまり、「日本は民主主義国である。沖縄県を除いて。」と権力が言うに等しい。普天間問題は、東京の政治エリートによる沖縄の構造的差別のシンボルとなったために、最早妥協は不可能だ。現在の「沖縄」対「東京の政治エリート」の二項対立が、「沖縄」対「本土」になり、やがて「分離独立権を持つ沖縄人」対「日本人」という決定的な対立の構図に発展しない保証はない。"

俺は、パトリオットである。
人格をかけてここでいうが、ナショナリストである前に、俺はパトリオットであることを深く自覚する(常に対立するものじゃないが。)。だから、「最大多数の最大幸福のために」などと言ってF-15のあの地響きがするような爆音を沖縄に押し付けるということが、正しい(=just)ことだと思えない。
また同時に、冷徹なマキャベリストの視点からも、佐藤氏が主張するように、沖縄が「本土」を敵視し、スペインのバスク、イギリスの北アイルランドになってしまうことは、日本国家の根幹を揺るがす重大な事態であると思う。
恐らく、国家を「安全保障と社会保障を始めとした行政サービスを提供する機能団体」としてのみ理解するものは、ことの重大さが分からないのだ。
家族が、強い感情的/精神的紐帯により初めて価値ある小さな共同体として"機能"しうように、国家もそれを必要とする。国家は社会契約によって誕生しうるものではないのだ。

ヤマトンチュよ、沖縄を夏休みのときだけ思い出すのはやめにしよう。
沖縄は日本なのだ、沖縄は日本の沖縄なのだ。
であるならば、我々は沖縄の幸福と安寧のための武装を開始しようではないか。

山桜