2011年2月2日水曜日

テルアビブとカイロとリヤドとワシントン

ドタバタの極みの感があるエジプトが、800人程度の大隊をシナイ半島に進めた。
これはイスラエル側が認めたもので、1979年の平和条約締結以来初めてのことである。
イスラエルとしては、混乱に乗じて、パレスチナの「テロリスト」がシナイ半島のエジプトーガザ国境のトンネルを通して武器をガザ地区に密輸することを防ぎたいのだろう。

イスラエルは、中東における30年以上にわたる友好国エジプト(=ムバラク政権)の崩壊に、いよいよ神経を尖らせている。ハーレツ紙のある記者は、イスラエルが南側で『新しいイラン』に直面するならば、防衛予算をさらに増加させ陸軍を拡張し、シリア・レバノン・イランのみならず、南にも神経をとがらせて全面で敵に対峙することになると大変な危惧を表明している。

オバマ米国大統領は、なぜこうもエジプトに厳しいのだろうか。
エジプトの政権を支持することは、親イスラエルであるはずのワシントンにとっては当然の外交政策であるように思えるのだが、実際は違う。
米国にとっても数十年来の友人(友好国)であるはずのエジプトに、イスラム政権が誕生するかもしれないというのに、オバマ大統領は、毎年の15億ドルのエジプトへの援助の停止の可能性をちらつかせながら、ぶっきらぼうに「ムバラク大統領はやめたほうがいい」と言っている。ホワイトハウスのギブス報道官は、「我々は毎日(エジプトの)状況を注視している。どんなシナリオ(注:ムバラク大統領の退陣を含むのだろう)にも対応できるよう準備している」と言っており、ワシントンはどうしてもカイロに新しい政権を望んでいるように見える。

イスラエルにとっては最悪なことは、このアラブに数少ない友好国(他の一国はヨルダン)の弱体化が起きたタイミングだ。
それは、言うまでもなくイランの核武装がいよいよ懸念される段階にきているタイミングということだ。
核兵器を保有するかもしれないイランを向こうに回し、これまでの30年間の安全保障と経済の基盤ともなってきたエジプトとの平和条約が覆され、さらに悪いことにカイロに「新しいイラン」が誕生することは、イスラエルにとって悪夢というほかに形容のしようがない。

「フラット化する世界」のトマス・フリードマンが言うように、イスラエルは、パレスチナとの平和条約締結に向けた努力を開始するか、上で述べたようなさらなる軍事国家(ハリネズミ国家)となるしかないように思う。
自国をフェンスで取り囲んで(既にイスラエルの国境は、シナイ半島以外は総てフェンスで囲われているという)若年人口が煮えたぎるアラブ国家に四面楚歌宜しく包囲されて、イスラエルに生きる道はあるのか。一つだけ確からしいことは、エジプトの政局混乱によって、イランのこの地域での影響力がさらに増大するということだ。

アメリカのこの問題への介入の仕方が本当に釈然としない。
アメリカはこれまでの数十年間に、エジプトに戦闘機や戦車や装甲車や対空ミサイルなどのありとあらゆる先進的な兵器を販売してきた(まぁよい顧客ということもあるのだろうが)のだ。
ちなみにサウジアラビアは、国営アラブ・ニュースの社説で、アメリカの中東でのプレゼンスの減少(ここでは財政支援の削減やイラクからの撤退)を批判して、イスラエルへだけは財政支援が削減されることはないと拗ねたように皮肉っている。
さらに、アラブは一様ではなく西洋風の民主主義だけが一番ではないという書きぶりで、「変化の風は吹いているが、それはunevenlyに吹いている(注:だからサウジは違うのだよ!)」と言い中東での民主化ドミノを精一杯牽制している。「民主化の波は、ムバラク大統領が辞任すればアラブに広がるかもしれない、だが”Not Everywhere"(どこでもそうとはいかない)」。サウジの気持ちがよく分かって面白い記事である。

つまり。
ワシントンは、イスラエルとサウジアラビアとそれから当事国であるエジプトという三つの中東における重要な同盟国のいずれもが反対している行動をとっているようにしか見えないのだ。イスラエルは南の政権が安定していてくれることが何よりも大切だし、サウジにとっては隣の独裁者が倒されれば震え上がるにきまっている。
何を企んでいるのだろうかと勘繰らざるを得ないではないか。
この時に考えるべきは、アメリカの財政・経済事情と2012年の大統領選挙である。What else?!


眠い.... 


また考えて書きます。


おやすみみたぶ。