誰じゃこんな不細工なTシャツでマスカットに行ったんは。
とてつもなく恥ずかしいことを全く恥じらいもなく堂々とやってしまうのが青春の一つの定義であるとすれば、俺が過ごしたあの時代は確かに俺の青春と呼べるのかもしれぬ。
男は、成功した記憶なんぞさっさと捨てるべきだ。
そもそも「成功した」と思った時点で男は肥溜めに飛び込むがよい。
苦汁を飲み捲土重来を決意して再び生きるのだと覚悟したその日のことを忘れてはならない。
我々は、自死の思想を捨ててはならない。
自死という選択肢を持てばこそ、意思を以て「生きる」ことを選びとることができる。
右に曲がることを「選べる」のは、左に曲がるか真っ直ぐ行くという選択肢があるときだけだ。
朝が来たから起きるんじゃねぇ。
腹が減ったから食うんじゃねぇ。
母が俺を生んだから生きるんじゃねぇ。
まして死にたくないからなんて生きるんじゃねぇ。
俺が生きるとかつて決めたから、今日再び決めたから、俺は生きる。
俺の人生において俺の意思以外の何物もその道標とはせぬという決意。
俺は、これを大切にしたい。
俺の真夏はこれから始まる。
これまでの30年は、これからの20年のために。
おぉ、太陽よ!あの夏貴様はあれほど遠くにあった。
されど今は俺の掌で踊っていやがる。
おぉ、月よ!貴様はあの夜あれほど俺に優しかった。
されど今や俺は貴様を呑み込んでしまえそうだ。
「者ども死ねやっっっ!!!」
(熱田神宮を出て桶狭間に向かう馬上にて、信長叫ぶ)