2012年6月24日日曜日

経済的独立なくして精神的独立なし、また逆も真也

バブル経済の時代、郵貯でさえ金利が8%もついたなどという夢のような話を聞いたことがあります。つまり日本はかつて現在のブラジルだったわけです。
もちろん、インフレ率も相当なものだったので相殺されるところは大きかったわけですが。
現在は数年来続く近代が始まって以来前代未聞のデフレ経済のなかで日本人は暮らしてきました。
というより、1990年以降に生まれたほとんどの日本人にとって、インフレというものは実感のないものであって、松屋と吉野家の低価格戦争やドンキホーテや100円均一ショップに象徴されるデフレ文化こそが彼らにとっての経済の実態ということでしょう。

そのことは、すなわち、投資に全く興味のない人が、平均的に言えば最も高利回りの「投資」実績を上げてきたと言えるかもしれません(というのは、デフレ期にあっても高成長の新興国や企業に投資することで高利回りを実現した人は少なからずいるからです)。
なぜならデフレの時代には通貨の価値が増大するので、何も考えずに預金口座に毎月振り込まれる給与をそのまま保持してできるかぎり節約しながら暮らすことが、超特大のホームランを狙わなければ最も効率的な資産運用といえるからです。

しかしながら、通貨は所詮紙幣、硬貨に過ぎません。
誰かが福沢諭吉の姿が描かれた日本銀行券壱萬円を他の誰かが受け取るときに期待しているのは、「別の誰かがこれを壱萬円相当の物品と交換してくれる」ということ、そのことだけです。
その根拠のない(金本位制ではないですから)期待の偉大なる連鎖という砂上の楼閣の上に現在の「負債資本主義」は構築されているのであって、この「期待」がなくなれば、いやわずかでも減少すれば、通貨の価値はいくらでも減少してしまうものでしょう。

僕は恐れています。
経済=デフレということを皮膚感覚として刷り込まれた若年層は、去年東北地方太平洋側を襲ってすべてを奪った津波のようなインフレの前に何もなすすべなく薙ぎ倒されてしまうのではないかということを。
それほど我々にとってインフレというのは、あり得ないことのように思えます。

僕は日本の財政危機をあおって増税を決行しようとする輩に与するものではないんですけどね。

とどのつまり、借金=悪という頭を捨てて、借金の反対側にどれだけのキャッシュフローを生む資産を幾らの価格で手に入れられるかが、数十億円の資産を持たぬ僕のような多くの個人の生存戦略にとっての課題であるように思います。
借金という梃子を使って他人の金でもって利殖することが経済活動の根本原則であり、だからこそ金利というものが近代資本主義経済がイギリスに誕生するはるかはるか昔から存在したのだと思います。

もはや国も会社もその他の何物も、僕やあなたたちの生存を保障するような力と意思を持っていません。
まぁ、生きるということはそういうことで、「真面目に勤めていたら生きていける」というのが異常なのです。
真面目に狩りをしても獲物を捕まえられない捕食者は、もはや捕食者たる資格がない、と言うのは乱暴でしょうか。

というわけで、投資の初心者が最近考えていることはこんなこと。

・株式投資は、超有望株(ライフネット生命はそうだと思っています)などを初期・黎明期に買えれば、キャピタルゲイン(株式の買値と売値の値差)は期待できるがキャッシュフローは極めて限定的。これは、急成長する企業はほとんどの場合低配当であるため(ソフトバンク、Apple、その他)。そのため、投資余力を当該投資期間中削減してしまい、柔軟な投資戦略の実行を妨げる可能性がある。
・他方で、安定した大型銘柄への株式投資は、高配当のおかげで3-5%(例えば総合商社)のインカムゲイン(毎年の配当収入)を期待できる場合もあるが、悲しいかなこの旨みを享受できるのは数十億単位で投資資金を動かせる超富裕層と機関投資家のみ。しかるにかかる銘柄の成長性は、現在の世界のマクロ経済環境において、怪しい。
・上記とも連関するが、生存戦略としての投資を考えるとき、恒常的かつ安定的なキャッシュフローを生む投資案件として不動産をポートフォリオの一部として保有しなければ、勤める会社に依存せず生きることは不可能。
・個人投資家にとっても企業にとっても利益の源泉は「リスクテイク」と「レバレッジ=梃子」にあり、これを抜きに資産形成は短期的にも長期的にも絶対に不可能。現在の経済環境を顧みるとき、最も注目すべきは世界史的にも異常ともいえる金利の水準であり、固定金利で借入を「ロング」し、この利率を上回る利率の投資案件に資金を振り向けられればよい。つまり、必要な利回りの水準が、金利低下のために非常な水準にまで低下しているのが世界ソブリンリスク危機の時代の現在である。
・不動産投資は、例えばマンション・アパートを保有し貸し出すという投資形態の場合は、キャピタルゲインが得られずともインカムゲインを安定的に得られるという期待が持てる。居住費の下方硬直性は、他の資産(株式、外国通貨、債券など)に比べてもはるかに高い。つまり、土地価格の下落の可能性そのものは、インカムゲインを意図する不動産投資を直接的に妨げるわけではない。