2010年7月17日土曜日

河井継乃介名言集(司馬遼太郎「峠」より)

「まったく華やいでいやがる」(セリフではないが)

「為すこともなくこの世に生き、そして死んでゆく、その覚悟だけはでき
ている。この覚悟のないやつは、たいした男ではない。」

「おれの日々の目的は、日々いつでも犬死できる人間たろうとしている。
死を飾り、死を意義あらしめようとする人間は、単に虚栄の徒であり、い
ざとなれば死ねぬ。人間は朝に夕に犬死の覚悟を新たにしつつ、生きる意
義のみを考える者がえらい。」

「この風が、体を吹き抜けているようでなければ大事はできぬ。....
体はどこにもない。からだには風が吹きとおっている。一個の気だけが歩
いている。おれはそれさ。」

「あたらしい世をひらく者は、あたらしい倫理道徳を創めねばならぬ。」

「よき孔孟の徒ほど、老荘の世界への強烈な憧憬者さ。」

「自然と融けて呼吸しておればよい。死も生も自然の一形態にすぎず、一
表現にすぎず、さほど重大なものではない。」

「なにごとかをなすということは、結局なにかに害をあたえるということ
だ。」

「人間の命なんざ、使うときに使わねば意味がない。...今徳川家
は危機に瀕しておる。三河以来の譜代におあす牧野家の当主としては、こ
のとき敵地へ乗り込みこのとき陳弁せねばなんのための譜代であろう。
世々七万五千石の御禄をいただいてきたのは、この一日のためにある。男
子とはそういう一日を感じうる者をいうのだ。」

「意見じゃないんだ、覚悟だよ、これは。官軍に対して起つか起たぬか。
起って箱根で死ぬ。箱根とは限らぬ、節義のために欣然屍を戦野に曝すか
どうか、そういう覚悟の問題であり、それが決まってから政略、戦略がで
てくる。政略や戦略は枝葉のことだ。覚悟だぜ。」

山桜