2011年9月21日水曜日

土光敏夫という男


「一瞬一瞬にすべてを賭けるという生き方の迫力。それが80年も積もると、極上の天然記念物を見る思いがする」

城山三郎が土光敏夫を評した言葉である。

土光敏夫は、1896年岡山県生まれ。関西高校(今夏の甲子園でベスト4)から東京高
等工業学校(現・東京工業大学)へ進み、卒業後に東京石川島造船所(現・IHI、石
川島播磨重工業)に入社。第四代経団連会長を務め、晩年には長年の政財界での大活躍が認められ、勲一等旭日桐花賞を陛下から賜った。
繰り返すが、勲一等旭日桐花賞!!

昨日、出町譲「復興と清貧 土光敏夫100の言葉」」という本を読んだ。
大変よく売れているらしい。どこの本屋でも平積みされている。
この人について同郷ながら全く知らなかったのが恥ずかしい。岡山県が名誉県民賞を与えたのも納得できる、とても立派な「人物」だ。

「清貧」という言葉が著書のタイトルに使われている通り、この人は大変質素な暮らしをしていたそうな。
横浜は鶴見の自宅はなんの変哲もない一戸建てで、小さな書斎のみ建て増してそこで本ばかり読んでいたそうな。
この本の最初のページに土光さんが暮らしていた家(廃墟だが)の写真が掲載されているが、「ここに経団連会長が暮らしていたのか」と誰もが思うだろう。
東芝の社長に就任した際には、社長室にあったシャワーを「なんでこんなもんがある
んじゃ」と言ってなくし、社長用の外車(メルセデス?)も小さな国産車に買い換えさせたという。「こんな大きな車いらんじゃろ」とでも言ったのだろうか。挙句には、大手家電メーカーのトップでありながら、テレビを持たず。東芝が出荷累計100万台目のテレビを社長の土光さんに贈ったらしい。
以下はWikipediaより。
"経団連会長就任後、それまで会長出張の慣例だった「前泊し2泊3日の日程」を全て
日帰り出張に変更、地方側からの接待を一切断った。経団連会館のエレベーターも来客用の1基だけを稼動させ残りは停止。高齢ながらも自ら階段を利用して経費削減に努めた。また、夜の会合を廃止する代わりに朝食会を頻繁に開いたため朝に弱い財界首脳は困り果てたという。"

土光さんの言葉やエピソードなどなかなか面白いのだが、一番面白いのは、最終章で城山三郎が土光さんを鶴見の自宅に訪ねたときのインタビューだ
城山が「84歳というのに御元気ですね」というと、土光さんはこう言った。
「毎日木刀を振っとる。振るだけじゃだめだから振り回しながら庭を飛びまわる。それをかれこれ60年続けとる
考えてみると、面白すぎる。
80歳の経団連会長だとか臨時行政調査会会長というビジネスマンとして最高位ともいうべき地位にあった人が、小さな家の軒先で木刀を振り回して飛び跳ねている。知らぬ人が見れば単なる変人だろう。
そういえば、漫画バカボンドでも幼年の武蔵は山中でひたすら木刀を振っていた。そして、そのとき自分は「理(ことわり)とともにあった」と回想する場面がある。

もう一つ、この人は猛烈な読書家だった。ドイツ語や英語のエンジニアリングの書物だけではなく、宗教や世界史などの分野も大量に読んでいたようだ(文芸春秋最新刊を見よ)。
息子さん曰く、「親父は帰宅したらすぐに飯を食べ、そのあとは書斎にこもって本を読んでいた」そうな。
どうもこうね、俺が会ったことがない俺のおじいさんはこんな人だったんかな?と思わせる、そんな雰囲気の人なんである。

金を持ったら高級車に乗って大きな家に住んで贅沢な食事をするというのは、人生における唯物史観に冒されたご仁のなせる業だ。躾られるのは得意だか自分で自分を律することができぬ人だ。自分の欲求さえ社会的に規定されてしまうというのでは、精神の奴隷だ。

勘違いしないで欲しいのだが、高級車に乗ることが悪なのではない。
「金がたっぷり手に入ったからフェラーリでも買おうか」と言ってフェラーリを買う男が格好悪いのだ。そして格好悪いことは男にとって悪なのだ。
俺は、5年前からAston Martinを手に入れることを意思し、3年前から42歳でDBSを買うと公言(?)している。
金を得たから買うのではなく、どうにもこうにも俺が乗りたいから手に入れる、ただそれだけのことだ。33百万円のあのスーパーカーが似合う男であるためには、俺は誰よりもストイックでなければならん。

俺は質素を旨としよう。プラスチックを拒否しながら暮らそうと思う。プラスチックは、大量生産大量消費文明の象徴である。そして、金儲けのためだけにこしらえられた不味い居酒屋の食べ物と堕落した商売用の笑顔を拒絶する。

ちなみに、土光さんの母親は60歳を過ぎてから、国のために女子教育を!と言って今の橘学苑(http://www.tachibana.ac.jp/oldindex.html)を設立した。なかなかものすごい"思い込み"ではないか。

帰って楽天で木刀を買います。

台風の風は、生命力を感じさせる。
和歌山や奈良の被災された方の生活が早く元に戻りますように。

これからは林業が栄えないといけないのでは?と考えている。というより、東京から離れて山に暮らしたいだけなんだけどね。
東京生まれの人にはすまんが、田舎者が本当に東京を馬鹿にしない限り、日本の復興はない。

今日一日を誰よりも熱く生きたか。
あぁ、全然自信ないぞ。世界には自由のために死んだ男が今日も一人はいるだろう。

毎晩点検するべし。

二子玉川を通過〜