2012年12月15日土曜日

「断固として日本と闘争する」 by中国外相

ある英雄の、小説のなかの一場面。
 
「継之助は、この戦争の意味について考え続けた。ーーー美にはなる。
と いうことであった。人間、成敗(成功不成功)の計算をかさね
つづけてついに行き詰ったとき、残された唯一の道として美へ昇華しなけ
ればならない。「美を済す」それが人間が神に迫りうる道である、と継之
助は思っている。
ー考えてもみよ。と継之助は思う。
いまこの大変動期にあたり、人間なるものがことごとく薩長の勝利者にお
もねり、打算に走り、あらそって新時代の側につき、旧恩を忘れ、男子の
道を忘れ、言うべきを言わなかったならば、後世はどうなるのであろう。
ーそれが日本男児か。
と、思うにちがいない。その程度のものが日本人かと思うであろう。知己
を後世に求めようとする継之助は、いまから行動はすべて「後世」という
観客の前で振る舞う行動でなければならないと思った。」
 
「おれの日々の目的は、日々いつでも犬死できる人間たろうとしている。
死を飾り、死を意義あらしめようとする人間は、単に虚栄の徒であり、い
ざとなれば死ねぬ。人間は朝に夕に犬死の覚悟を新たにしつつ、生きる意
義のみを考える者がえらい。」
 
-司馬「峠」より